2011年 09月 27日
就職活動 |
「“就活は子どもにまかせるな”、鈴木健介著、中公新書 2011年刊」 という本を書店で見かけて、ビックリした。大学入試以降の人生は当人が自分で切り拓いていくものと思ってきた我々の世代にとっては、時代はそこまで親に要求するように変っているのかと、大変驚いた次第である。
ただ、数年前、自分の娘が就職の際に大変な苦労をしていて、もう少し一緒になって考えてやり助けてやらねばいけなかったのかなあと、少し後悔した思い出がよみがえってきて、この経験豊富な経営コンサルタントの本を買って読んでみた。
この本の著者は言う。
「大学進学を勧めた親としは、子供の就職活動にも共同責任を持たねばならない。」
「先が見えず迷っている子供は親に適切なアドバイスを求めている。」
「あなたが敷いたレールの終着駅は大学入試ではなく就職であることを再認識してほしい。」
なるほど、では、具体的に何をしたらよいのかというと、
「中高生のころから将来目標を定め、それに向かって職業意識を高めていく。」
「子供の適性能力を正しく知る。それによって進路を間違わずに選ぶことができる。」
ウーム。そこまで親が子どもの面倒を見なければならないのか。
特に中高生のころから将来目標を定めるというのは大変なことだ。幼小時から音楽とかスポーツに特別な才能を発揮するような場合は例外として、多くの場合、自分の将来像など、若いころには分からないのではないだろうか。
世の中で成功した人々(例えば日経新聞の“私の履歴書”を執筆するような)の話を読んでも、思春期に自分の将来目標を決めていたなどという人はほとんどいない。社会に出てから目の前に現れたことを一生懸命やっていたら、成功していたというところが、現実なのではないかと思われる。
一方、適正能力を正しく知るということは、確かに重要なことかもしれない。それに関して、著者は、「考える役割」、「考えを商品化する役割」、「社会に広げる役割」の3つを定義し、チェックシートにてどれに当てはまるかを判断することを提案する。
この分類は製造業に当てはめれば、研究開発、設計・製造・商品企画、営業・広告ということになるのだろうか。
そういうことを、就職前から考えるという習慣は、今の親にも学生にも全くない訳であるから、この作業を通じて、自分の能力・性格はどの職種に向くのかを、あらかじめ自覚しておくということは確かに有益であろうと思われる。
最近は、大学においても、学部の3年生と修士課程の1年の学生が、就職活動に大変な時間と精力をそそぎ、勉強や研究が全く進まない状態に陥っていることが、大きな問題となっている。企業側のやり方に、大学としても大いに注文をつけたいところである。
ただ、昔のような大雑把な採用に比べ、最近の企業のよい人材を厳選したいという姿勢は明らかに変わってきている。
親の指導も重要かもしれないが、大学教員のほうでも、就職活動に細かく助言や手助けをしてやらねばいけないのかなと、最近の状況を見て思いはじめているところである。
巷には山のような就活ノウハウ本が出ているが、怪しげなものも少なくない。学生たちには、まずは、冒頭の本をちょっと読んでみることを薦めてみたいと思っている。
ただ、数年前、自分の娘が就職の際に大変な苦労をしていて、もう少し一緒になって考えてやり助けてやらねばいけなかったのかなあと、少し後悔した思い出がよみがえってきて、この経験豊富な経営コンサルタントの本を買って読んでみた。
この本の著者は言う。
「大学進学を勧めた親としは、子供の就職活動にも共同責任を持たねばならない。」
「先が見えず迷っている子供は親に適切なアドバイスを求めている。」
「あなたが敷いたレールの終着駅は大学入試ではなく就職であることを再認識してほしい。」
なるほど、では、具体的に何をしたらよいのかというと、
「中高生のころから将来目標を定め、それに向かって職業意識を高めていく。」
「子供の適性能力を正しく知る。それによって進路を間違わずに選ぶことができる。」
ウーム。そこまで親が子どもの面倒を見なければならないのか。
特に中高生のころから将来目標を定めるというのは大変なことだ。幼小時から音楽とかスポーツに特別な才能を発揮するような場合は例外として、多くの場合、自分の将来像など、若いころには分からないのではないだろうか。
世の中で成功した人々(例えば日経新聞の“私の履歴書”を執筆するような)の話を読んでも、思春期に自分の将来目標を決めていたなどという人はほとんどいない。社会に出てから目の前に現れたことを一生懸命やっていたら、成功していたというところが、現実なのではないかと思われる。
一方、適正能力を正しく知るということは、確かに重要なことかもしれない。それに関して、著者は、「考える役割」、「考えを商品化する役割」、「社会に広げる役割」の3つを定義し、チェックシートにてどれに当てはまるかを判断することを提案する。
この分類は製造業に当てはめれば、研究開発、設計・製造・商品企画、営業・広告ということになるのだろうか。
そういうことを、就職前から考えるという習慣は、今の親にも学生にも全くない訳であるから、この作業を通じて、自分の能力・性格はどの職種に向くのかを、あらかじめ自覚しておくということは確かに有益であろうと思われる。
最近は、大学においても、学部の3年生と修士課程の1年の学生が、就職活動に大変な時間と精力をそそぎ、勉強や研究が全く進まない状態に陥っていることが、大きな問題となっている。企業側のやり方に、大学としても大いに注文をつけたいところである。
ただ、昔のような大雑把な採用に比べ、最近の企業のよい人材を厳選したいという姿勢は明らかに変わってきている。
親の指導も重要かもしれないが、大学教員のほうでも、就職活動に細かく助言や手助けをしてやらねばいけないのかなと、最近の状況を見て思いはじめているところである。
巷には山のような就活ノウハウ本が出ているが、怪しげなものも少なくない。学生たちには、まずは、冒頭の本をちょっと読んでみることを薦めてみたいと思っている。
by sakuraimac
| 2011-09-27 05:04
| 人生
|
Comments(4)
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かぁぅわ
at 2011-09-28 19:40
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私も昔,就職活動をしておりました.
就職活動といえばテストセンターという適正検査なるものがあります.
中学受験のような頭を使ぅわぁれる問題が出ます.
お受験をやってるエリート達には簡単だと言っていますが,凡人には
難しいものがあります.地頭力を問われているため,日ごろから
「考える」ということをしておく必要があると思われます.
よって学生たちにも常日頃,考えさせると良いと思われます.
就職活動といえばテストセンターという適正検査なるものがあります.
中学受験のような頭を使ぅわぁれる問題が出ます.
お受験をやってるエリート達には簡単だと言っていますが,凡人には
難しいものがあります.地頭力を問われているため,日ごろから
「考える」ということをしておく必要があると思われます.
よって学生たちにも常日頃,考えさせると良いと思われます.
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sakuraimac
at 2011-09-29 01:01
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かぁぅわさん、コメントありがとうございます。
地頭力といえば論理的思考力やコミュニケーション能力であり、まさに企業の求めるものですね。
日頃の研究室の活動で、どうやったら向上させられるのか、私もちょっと考えてみたいと思います。
地頭力といえば論理的思考力やコミュニケーション能力であり、まさに企業の求めるものですね。
日頃の研究室の活動で、どうやったら向上させられるのか、私もちょっと考えてみたいと思います。
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bonjin_pc
at 2011-11-24 01:26
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私は上記の「勉強や研究が全く進まない状態に陥っている」といった問題がすべて企業側にある訳ではないように思います。企業側も優秀な人材を獲得したいため、面接などに時間を使うのは一概に悪いようには思いません。翻って、私自身学校側、特に成績の意味するものに問題があると思います。日本の学校での成績はほとんどがペーパーテストのできによって評価されるため、社会人スキルとは全く関係のない指標として企業側に理解されています。そのため企業側は再度膨大に時間を割いてそのスキルの確認を行わなければなりません。これは非常に合理的でないように思います。
それに対してアメリカの成績の付け方は日本とは少し違います。
アメリカの学校における成績は基本的にペーパーテストのできだけでなく、グループワークやディベートが多く行われ、社会人スキルつまりコミュニケーション能力、協調性やリーダーシップなどに基づいて評価されます。よって、企業側は膨大な時間を利用して面接をしなくてもほとんど成績で判断できるそうです。
このようなアメリカの合理的な方法を採用することが学校側、企業側におのずとwinwinな関係を築かせ、問題解決に繋がるのではないでしょうか。
それに対してアメリカの成績の付け方は日本とは少し違います。
アメリカの学校における成績は基本的にペーパーテストのできだけでなく、グループワークやディベートが多く行われ、社会人スキルつまりコミュニケーション能力、協調性やリーダーシップなどに基づいて評価されます。よって、企業側は膨大な時間を利用して面接をしなくてもほとんど成績で判断できるそうです。
このようなアメリカの合理的な方法を採用することが学校側、企業側におのずとwinwinな関係を築かせ、問題解決に繋がるのではないでしょうか。
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sakuraimac at 2011-11-24 11:29
bonjin_pc さん。連続のコメントありがとうございます。
問題提起された日本の教育の件、非常に重要なことと思います。ここで議論できるような話題ではないので、いつか、ゆっくりとお話をしたいですね。私の素性はお分かりでしょうから、メールをください。
一言だけコメントすると、米国の大学教育も手放しで称賛できるものではありません。企業経営者を育てるためのMBA(経営学修士課程)がさかんに行われていますが、米国実業界からは、MBA出身者は理屈ばかり並べてちっとも役に立たないとの強い批判が出ています。一方では、理系のほうは、やたら詰め込み教育を行っています。私の留学経験からは、日本の自主的に研究をして修士論文をまとめることのほうが、教育的価値は大きいと思っています。(これは日本の企業も認めていて、修士卒業者は優遇してますよね。)
なお、一方では、博士卒業者の極端な冷遇は、技術立国たるべき今後の日本の大きな課題だと思っています。
問題提起された日本の教育の件、非常に重要なことと思います。ここで議論できるような話題ではないので、いつか、ゆっくりとお話をしたいですね。私の素性はお分かりでしょうから、メールをください。
一言だけコメントすると、米国の大学教育も手放しで称賛できるものではありません。企業経営者を育てるためのMBA(経営学修士課程)がさかんに行われていますが、米国実業界からは、MBA出身者は理屈ばかり並べてちっとも役に立たないとの強い批判が出ています。一方では、理系のほうは、やたら詰め込み教育を行っています。私の留学経験からは、日本の自主的に研究をして修士論文をまとめることのほうが、教育的価値は大きいと思っています。(これは日本の企業も認めていて、修士卒業者は優遇してますよね。)
なお、一方では、博士卒業者の極端な冷遇は、技術立国たるべき今後の日本の大きな課題だと思っています。