秋入学制度とグローバル化
東京大学が、大学入学の時期を秋にすることへの影響検討するワーキンググループを作ったことが7/1に報道され、以来、色々議論を呼んでいる。
大学の国際化が一番の目的とされているが、実現されると、実際に最も大きな影響を受けるのは日本の学生であろう。高校卒業から大学入学までの半年と、大学卒業から会社入社までの半年、合わせて1年間のギャップイヤー(空白期間)が生ずる。これを学生たちがどう有効活用できるかが、秋入学制度の最大のポイントとなる。
私の勤めている大学は理工系であるが、学生は結構勉強をしなければならない。また、大学院に入ってからも研究に割かねばならない時間は多い。自分の学生時代に比べても、今の大学生はかなり忙しいのではないかと感ずる。
その意味では、青春の一時期、何にも束縛されない自由なギャップイヤーがあることは、自己研鑚の上でも大変よいことなのではないかと思われる。英国などではギャップイヤーをアルバイトやボランティアなどを通じて社会経験を積む慣習もあるそうだ。
また、近年問題となっている、就職活動によって大学教育が影響を受けるという問題の解決にも役立ちそうだ。時間を持て余すだけではないかとか、人生の中で1年無駄になるのではないかという意見もあるようだが、私は秋入学制度には大賛成である。
その改革に、東大が先陣を切って取り組もうとしている姿勢には、大いに拍手を送りたい。
ところで、この東大の試みに大前研一氏が異を唱えている。
秋入学にしただけでは、グローバルな人材は育たないというものである。日本の大学教授に、国際的に活躍できる人材を育てる能力がなければ、単に時期をずらしただけで終わってしまうだろうと氏は主張する。それは、確かに大前氏の言うとおりである。ちなみに、私に、外国人に英語で授業をせよと言われても、とてもできそうにない。
大前氏いわく、中国の清華大学、北京大学、上海交通大学では、英語による授業を次々と導入しており、また、EUとの合弁による上海のCEIBSでは、欧米の学者を大勢招聘し、すべての授業を英語で行っている。そういう環境で育った学生たちは強烈な国際感覚を持っており、英語も堪能だそうである。問題は、入学時期という単純なものではなく、既存の日本の大学のカリキュラムを変えられるかどうかという点にある。というのが、UCLA教授とビジネス・ブレークスルー大学学長を務める大前氏の主張である。
私も、自分の研究室の修士課程の学生何名かを、毎年、国際会議に出席させるべく指導しているが、学生の英語能力の育成には、うまい手立てがなく、困っている。こればかりは、個人での指導能力には限界がある。
その解決策として、一般の授業を英語化するという議論があるが、どうもそれはうまくいきそうな気がしない。私自身の留学体験から言うと、大学の授業を英語で聞いるだけでは、ほとんどが頭を素通りして残らず、英語力の向上にはあまり役に立たなかった。(日本語の授業でも、ほとんど聞いていないのだから、ましてよく分からぬ英語となれば、無理もないと思われる。)
自分の英語力が少し向上したなと思ったのは、帰国後、海外の会社と共同開発にたずさわったときの経験が大きかった。1対1でどうしても必要なコミュニケーションを取らねばならないとなると、先方も必要にせまられて、こちらのレベルに合わせて、易しく何度も言い直してくれる。これが実に大きい。母親が子供に話しかけて、子供がごく自然に言葉をしゃべれるようになるというのと、よく似たメカニズムである。
このメカニズムのない、一方通行の講義では、ほとんど語学能力の向上には効果がないと思われる。効果があがるとすれば、少人数のグループディスカッションのような場合であろう。しかし、これは、大学教育では中々困難である。
やるとすれば、外国人の教員を増やし、留学生が英語だけで卒業できる環境を作り、その上で研究室に外国人留学生を増やして、英語での日常会話の機会を増やすということが考えられる。
おそらく東大ではその方向を模索しているのだろうと思うが、地方の小規模な予算の大学では、実現はそう簡単ではない。
秋入学には大賛成だが、グローバルな人材育成というのは本当に難しい課題である。
大学の国際化が一番の目的とされているが、実現されると、実際に最も大きな影響を受けるのは日本の学生であろう。高校卒業から大学入学までの半年と、大学卒業から会社入社までの半年、合わせて1年間のギャップイヤー(空白期間)が生ずる。これを学生たちがどう有効活用できるかが、秋入学制度の最大のポイントとなる。
私の勤めている大学は理工系であるが、学生は結構勉強をしなければならない。また、大学院に入ってからも研究に割かねばならない時間は多い。自分の学生時代に比べても、今の大学生はかなり忙しいのではないかと感ずる。
その意味では、青春の一時期、何にも束縛されない自由なギャップイヤーがあることは、自己研鑚の上でも大変よいことなのではないかと思われる。英国などではギャップイヤーをアルバイトやボランティアなどを通じて社会経験を積む慣習もあるそうだ。
また、近年問題となっている、就職活動によって大学教育が影響を受けるという問題の解決にも役立ちそうだ。時間を持て余すだけではないかとか、人生の中で1年無駄になるのではないかという意見もあるようだが、私は秋入学制度には大賛成である。
その改革に、東大が先陣を切って取り組もうとしている姿勢には、大いに拍手を送りたい。
ところで、この東大の試みに大前研一氏が異を唱えている。
秋入学にしただけでは、グローバルな人材は育たないというものである。日本の大学教授に、国際的に活躍できる人材を育てる能力がなければ、単に時期をずらしただけで終わってしまうだろうと氏は主張する。それは、確かに大前氏の言うとおりである。ちなみに、私に、外国人に英語で授業をせよと言われても、とてもできそうにない。
大前氏いわく、中国の清華大学、北京大学、上海交通大学では、英語による授業を次々と導入しており、また、EUとの合弁による上海のCEIBSでは、欧米の学者を大勢招聘し、すべての授業を英語で行っている。そういう環境で育った学生たちは強烈な国際感覚を持っており、英語も堪能だそうである。問題は、入学時期という単純なものではなく、既存の日本の大学のカリキュラムを変えられるかどうかという点にある。というのが、UCLA教授とビジネス・ブレークスルー大学学長を務める大前氏の主張である。
私も、自分の研究室の修士課程の学生何名かを、毎年、国際会議に出席させるべく指導しているが、学生の英語能力の育成には、うまい手立てがなく、困っている。こればかりは、個人での指導能力には限界がある。
その解決策として、一般の授業を英語化するという議論があるが、どうもそれはうまくいきそうな気がしない。私自身の留学体験から言うと、大学の授業を英語で聞いるだけでは、ほとんどが頭を素通りして残らず、英語力の向上にはあまり役に立たなかった。(日本語の授業でも、ほとんど聞いていないのだから、ましてよく分からぬ英語となれば、無理もないと思われる。)
自分の英語力が少し向上したなと思ったのは、帰国後、海外の会社と共同開発にたずさわったときの経験が大きかった。1対1でどうしても必要なコミュニケーションを取らねばならないとなると、先方も必要にせまられて、こちらのレベルに合わせて、易しく何度も言い直してくれる。これが実に大きい。母親が子供に話しかけて、子供がごく自然に言葉をしゃべれるようになるというのと、よく似たメカニズムである。
このメカニズムのない、一方通行の講義では、ほとんど語学能力の向上には効果がないと思われる。効果があがるとすれば、少人数のグループディスカッションのような場合であろう。しかし、これは、大学教育では中々困難である。
やるとすれば、外国人の教員を増やし、留学生が英語だけで卒業できる環境を作り、その上で研究室に外国人留学生を増やして、英語での日常会話の機会を増やすということが考えられる。
おそらく東大ではその方向を模索しているのだろうと思うが、地方の小規模な予算の大学では、実現はそう簡単ではない。
秋入学には大賛成だが、グローバルな人材育成というのは本当に難しい課題である。
名古屋にある某大学の教員のつれづれ随想録です。 (2011/6に開始しました。)
by sakuraimac
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