2011年 11月 09日
読書案内 |
ちょっと前の話になるが、5月に亡くなられた司会者の児玉清さんが、自宅に大きな書庫を持つ大変な読書家であったことが紹介されて話題となっていた。世の中には、本を読むのが大好きという人は多い (特に文科系の人には)。私自身は典型的な理科系人間であり、高校時代には国語は大の苦手科目で、青春時代に読んだ文学小説を数えると両手で十分に足りる程である。書庫を持つほど本を読むという人の、読書能力とエネルギーにはただ感心するのみである。
したがって、読書について語る資格など自分には全くないと思っているのだが、あえて、ここに書こう思ったのは、本などあまり読まない多くの人々にとっては、勤勉なる読書家の人々の言葉は少しハードルが高すぎて、ついてはいけないのではないかと思ったからである。
古い時代は、本を書くということは、非常に優れてりっぱな仕事をした人が、その生涯をかけて行ったことであったろうと思う。ところが、現代は誰でもが簡単に書けてしまい、出版社は次から次へと安易に本を出版する。その結果、世の中には、即席作りのつまらない本が横行することになる。この人が本など書く資格があるのだろうかと、読書家ではない私でさえ思わず疑いたくなるような本もたくさんある。
このような本の洪水の中で、ごく普通の人が、本当に読む価値のある本に出会うためには、よい読書案内というものが必要不可欠なのではないかと思う。ところが、世の中には、普通の人が利用できるような読書案内というものが意外と少ない。ある分野に偏っていたり、難しすぎたり、著者の個人的好みが強く出過ぎたりと、中々手ごろなものがないのである。私は読書家では全くないが、読書案内だけは結構な労力をかけて捜してきた。
その中で、私が出会った最高の読書案内は、当代随一の読書家と言われた谷沢永一氏の書いた次の2冊である。
「ビジネスマンのための100冊の本 PHP研究所」
「ビジネスマンのための100冊の古典 PHP研究所」
1987年刊で古いが、これは、私にとっては素晴らしい本であった。これを超える読書案内を私は未だ発見していない。ここに紹介された本を、順に読んでいったことは、私の人生において実に役に立った。
ビジネスマンのためと銘打っているので、純文学小説はないが、一方では、安易なビジネスノウハウ的なものも一切ない。ごく普通の人(サラリーマン)が、人生をどう生きるかということについて色々考えさせられ、そして目から鱗が落ちるような体験をさせてくれるような名著が並ぶ。難しすぎず、易しすぎず、また、新書・文庫といった入手しやすい本を選ぶという配慮がなされているのも、普通の読者にとっては大変親切である。
あなたの愛読書は聞かれたら、私はまずこの2冊あげたい。1987年以前に発行されたもので、ごく普通の人が読んでおくべき本は、ほとんどこの中にあると言って過言ではない、と私は思っている(と言えるほどの資格が自分にはないことは承知しているが)。
さて、では、1987年以降に発行された名著を、どうやって捜そうかとなると、これが、中々よい道しるべが見つからない。谷沢氏は今年の3月に亡くなられてしまったので、続編を書いていただくことは期待できない。誠に残念である。
谷沢氏とよく似た思想で書かれているのが、読書通においては西の谷沢、東の渡部と評された渡部昇一氏の「ビジネスマン最強の100冊 知的生き方文庫」がある。 1994年の著作を2002年に改訂したものであるが、選択の視点が谷沢氏の本とかなりよく似ている。お二人は大変に気が合ったようで、何と対談本が20冊も発行されている。二人が推薦した100冊のうち何冊が重複しているか数えるのも面白い。この本もお勧めである。
書評として有名なのは、知の巨人と言われた立花隆氏の次の2冊であろうか。
「ぼくはこんな本を読んできた 文春文庫 1999年刊」
「ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 文春文庫 2003年刊」
週刊文春の「私の読書日記」の記事をまとめたものであるが、氏の驚くべき読書量に圧倒されてしまう。残念なのは、新刊本の書評なので、いわゆる推薦書の案内にはなっていないことである。科学関連のものも多く含まれているのは好ましいが、ベストセラーをあえて避けているのは残念である。世のベストセラーなるものが、本当に読む価値があるかどうかについて、知の巨人である立花氏の寸評をぜひ聞きたいのであるが。
谷沢氏と並ぶ読書家とも言われた、向井敏氏の「本の中の本 中公文庫 1990年刊」も有名である。戦後の名著150冊を選び、キレのよい簡潔な紹介が並ぶ。しかしながら、私が読んだことがあるのは、その中で数冊もないので、正直のところ、この本の価値をよく判断することができない。
マイナーなところでは、「大学教授になる方法」なる奇書で有名になった鷲田小彌太氏の「クロネコBOOK倶楽部 青弓社 1991年刊」などというのもある。書評としては中々面白いが、読書案内としてはちょっとマイナーなところであろうか。
ところで、読書案内といえば、知の集積している大学こそが、学生へ優良図書を推薦するという意味で大きな役割を担ってもよいはずである。
有名なものに「東大教師が新入生にすすめる本 文春新書」がある。日本最高学府の先生方の書籍紹介には大変興味深いものがある。1994年から2008年までの間に2冊に分かれて刊行されているが、総数2500冊にも及ぶ書籍の紹介は壮観である。あまりに壮大で専門的すぎて、一般の人 (東大新入生にも?) には、読書案内としては、ちょっとついてはいけないのではないだろうか。ただし、学問の世界をめざす人にとっては、理系でも文系でもよい案内となるのかもしれない。
しっかりとした編集方針のもとに書かれているものに、広島大学の「大学新入生に薦める101冊の本 岩波書店 2009年刊」がある。広島大学が、編集プロジェクトを起こしてまとめ上げたもので、この本は大変よく出来ていている。大学がまとめているので、専門的色彩は濃いのだが、藤沢修平の「蝉しぐれ」なども掲載されていて、一般の読者への配慮もなされている。最後の章にまとめてある本の選び方についての手引きも大変親切である。この本はお勧めである。
近畿大学の柄谷行人氏らが中心になってまとめた、「必読書150 太田出版 2002年刊」
は、人文社会、文学を中心に150冊を紹介している。カバーに、これを読まなければサルである、と面白いキャッチフーズが書いてあるが、中身のレベルはかなり高い。文系の人にはきっと役立つであろう。
あと、東大の教養学部の先生たちがまとめた、「教養のためのブックガイド 東京大学出版会 2005年刊」がある。この本は、各書籍別の解説がないので、学問・教養のよい解説にはなっているが、残念ながら、一般の人向けの読書案内とは言えない。
大学には、読書が好きな有能な人材がたくさんいるはずであろうから、もっと大学発の読書案内がたくさん出てきてもよいはずである。しかしながら、捜してみても私には上記4冊以外の本は見つけられなかった。
各大学が個別に行うのが難しければ、例えば、全国の大学教員に、学生への推薦図書を5冊あげてもらって、統計を取ってみてはどうだろうか。
以前、文芸春秋誌が、各界の著名人に読書アンケートを取ったことがあるが、そのとき圧倒的に1位になったのは、司馬遼太郎の「坂の上の雲」だった。この結果には、読書家でない私も、なるほどと大いに納得することができた。
統計結果の順位表だけでも、重要な読書指針となる。どこかの書店がやってくれないものだろうかと、期待したいのだが・・・。
<付記>
新刊でない本を購入する際、私が頻繁に利用しているのは、Amazonの中古本サービスである。ここでは、絶版の本も大体見つかり、運がよいと、1円+送料250円で意外な本が新品同様の状態で手に入る。このサービスは絶対にお得である。(私のお勧めの「ビジネスマンのための100冊」は251円、「大学新入生に薦める101冊の本」は1011円で簡単に手に入る。)

したがって、読書について語る資格など自分には全くないと思っているのだが、あえて、ここに書こう思ったのは、本などあまり読まない多くの人々にとっては、勤勉なる読書家の人々の言葉は少しハードルが高すぎて、ついてはいけないのではないかと思ったからである。
古い時代は、本を書くということは、非常に優れてりっぱな仕事をした人が、その生涯をかけて行ったことであったろうと思う。ところが、現代は誰でもが簡単に書けてしまい、出版社は次から次へと安易に本を出版する。その結果、世の中には、即席作りのつまらない本が横行することになる。この人が本など書く資格があるのだろうかと、読書家ではない私でさえ思わず疑いたくなるような本もたくさんある。
このような本の洪水の中で、ごく普通の人が、本当に読む価値のある本に出会うためには、よい読書案内というものが必要不可欠なのではないかと思う。ところが、世の中には、普通の人が利用できるような読書案内というものが意外と少ない。ある分野に偏っていたり、難しすぎたり、著者の個人的好みが強く出過ぎたりと、中々手ごろなものがないのである。私は読書家では全くないが、読書案内だけは結構な労力をかけて捜してきた。
その中で、私が出会った最高の読書案内は、当代随一の読書家と言われた谷沢永一氏の書いた次の2冊である。
「ビジネスマンのための100冊の本 PHP研究所」
「ビジネスマンのための100冊の古典 PHP研究所」
1987年刊で古いが、これは、私にとっては素晴らしい本であった。これを超える読書案内を私は未だ発見していない。ここに紹介された本を、順に読んでいったことは、私の人生において実に役に立った。
ビジネスマンのためと銘打っているので、純文学小説はないが、一方では、安易なビジネスノウハウ的なものも一切ない。ごく普通の人(サラリーマン)が、人生をどう生きるかということについて色々考えさせられ、そして目から鱗が落ちるような体験をさせてくれるような名著が並ぶ。難しすぎず、易しすぎず、また、新書・文庫といった入手しやすい本を選ぶという配慮がなされているのも、普通の読者にとっては大変親切である。
あなたの愛読書は聞かれたら、私はまずこの2冊あげたい。1987年以前に発行されたもので、ごく普通の人が読んでおくべき本は、ほとんどこの中にあると言って過言ではない、と私は思っている(と言えるほどの資格が自分にはないことは承知しているが)。
さて、では、1987年以降に発行された名著を、どうやって捜そうかとなると、これが、中々よい道しるべが見つからない。谷沢氏は今年の3月に亡くなられてしまったので、続編を書いていただくことは期待できない。誠に残念である。
谷沢氏とよく似た思想で書かれているのが、読書通においては西の谷沢、東の渡部と評された渡部昇一氏の「ビジネスマン最強の100冊 知的生き方文庫」がある。 1994年の著作を2002年に改訂したものであるが、選択の視点が谷沢氏の本とかなりよく似ている。お二人は大変に気が合ったようで、何と対談本が20冊も発行されている。二人が推薦した100冊のうち何冊が重複しているか数えるのも面白い。この本もお勧めである。
書評として有名なのは、知の巨人と言われた立花隆氏の次の2冊であろうか。
「ぼくはこんな本を読んできた 文春文庫 1999年刊」
「ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 文春文庫 2003年刊」
週刊文春の「私の読書日記」の記事をまとめたものであるが、氏の驚くべき読書量に圧倒されてしまう。残念なのは、新刊本の書評なので、いわゆる推薦書の案内にはなっていないことである。科学関連のものも多く含まれているのは好ましいが、ベストセラーをあえて避けているのは残念である。世のベストセラーなるものが、本当に読む価値があるかどうかについて、知の巨人である立花氏の寸評をぜひ聞きたいのであるが。
谷沢氏と並ぶ読書家とも言われた、向井敏氏の「本の中の本 中公文庫 1990年刊」も有名である。戦後の名著150冊を選び、キレのよい簡潔な紹介が並ぶ。しかしながら、私が読んだことがあるのは、その中で数冊もないので、正直のところ、この本の価値をよく判断することができない。
マイナーなところでは、「大学教授になる方法」なる奇書で有名になった鷲田小彌太氏の「クロネコBOOK倶楽部 青弓社 1991年刊」などというのもある。書評としては中々面白いが、読書案内としてはちょっとマイナーなところであろうか。
ところで、読書案内といえば、知の集積している大学こそが、学生へ優良図書を推薦するという意味で大きな役割を担ってもよいはずである。
有名なものに「東大教師が新入生にすすめる本 文春新書」がある。日本最高学府の先生方の書籍紹介には大変興味深いものがある。1994年から2008年までの間に2冊に分かれて刊行されているが、総数2500冊にも及ぶ書籍の紹介は壮観である。あまりに壮大で専門的すぎて、一般の人 (東大新入生にも?) には、読書案内としては、ちょっとついてはいけないのではないだろうか。ただし、学問の世界をめざす人にとっては、理系でも文系でもよい案内となるのかもしれない。
しっかりとした編集方針のもとに書かれているものに、広島大学の「大学新入生に薦める101冊の本 岩波書店 2009年刊」がある。広島大学が、編集プロジェクトを起こしてまとめ上げたもので、この本は大変よく出来ていている。大学がまとめているので、専門的色彩は濃いのだが、藤沢修平の「蝉しぐれ」なども掲載されていて、一般の読者への配慮もなされている。最後の章にまとめてある本の選び方についての手引きも大変親切である。この本はお勧めである。
近畿大学の柄谷行人氏らが中心になってまとめた、「必読書150 太田出版 2002年刊」
は、人文社会、文学を中心に150冊を紹介している。カバーに、これを読まなければサルである、と面白いキャッチフーズが書いてあるが、中身のレベルはかなり高い。文系の人にはきっと役立つであろう。
あと、東大の教養学部の先生たちがまとめた、「教養のためのブックガイド 東京大学出版会 2005年刊」がある。この本は、各書籍別の解説がないので、学問・教養のよい解説にはなっているが、残念ながら、一般の人向けの読書案内とは言えない。
大学には、読書が好きな有能な人材がたくさんいるはずであろうから、もっと大学発の読書案内がたくさん出てきてもよいはずである。しかしながら、捜してみても私には上記4冊以外の本は見つけられなかった。
各大学が個別に行うのが難しければ、例えば、全国の大学教員に、学生への推薦図書を5冊あげてもらって、統計を取ってみてはどうだろうか。
以前、文芸春秋誌が、各界の著名人に読書アンケートを取ったことがあるが、そのとき圧倒的に1位になったのは、司馬遼太郎の「坂の上の雲」だった。この結果には、読書家でない私も、なるほどと大いに納得することができた。
統計結果の順位表だけでも、重要な読書指針となる。どこかの書店がやってくれないものだろうかと、期待したいのだが・・・。
<付記>
新刊でない本を購入する際、私が頻繁に利用しているのは、Amazonの中古本サービスである。ここでは、絶版の本も大体見つかり、運がよいと、1円+送料250円で意外な本が新品同様の状態で手に入る。このサービスは絶対にお得である。(私のお勧めの「ビジネスマンのための100冊」は251円、「大学新入生に薦める101冊の本」は1011円で簡単に手に入る。)

by sakuraimac
| 2011-11-09 22:52
| 娯楽・趣味
|
Comments(4)
僕の友達にも、Amazonで中古本を一気に10冊購入してしまうくらいの読書家がいるので、ぜひ薦めてあげたいです。
一方で、一冊の本を読むのに2年かかる人もいるので、「読みやすい本」をまとめた読書案内もあると嬉しいですね
一方で、一冊の本を読むのに2年かかる人もいるので、「読みやすい本」をまとめた読書案内もあると嬉しいですね
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世の中、本を読む人と全く読まない人に2分されてしまうような気がするのですが、その中間の人々に、少数でもいいから、良書を読んで、人生に役立ててほしなと思っております。
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
ぽおさん、
ブログにコメントいただきありがとうございます。googleで見つけられるとは嬉しいことです。松永さんのメールアドレスは残念ながら、個人情報なので公開はできません。これから、講演会の概要をブログに載せますので、そこで質問をコメントで入れてください。松永さんに転送いたします。
ブログにコメントいただきありがとうございます。googleで見つけられるとは嬉しいことです。松永さんのメールアドレスは残念ながら、個人情報なので公開はできません。これから、講演会の概要をブログに載せますので、そこで質問をコメントで入れてください。松永さんに転送いたします。

