2011年 12月 04日
山田宰氏講演会報告 |
12月2日(金)に、電子情報通信学会東海支部の主催で、山田宰氏によって講演会「デジタルTV放送方式の研究開発と海外展開/研究開発マネジメントと技術立国日本への提言」が行われたが、その概要について報告したい。聴講者は、メーカ、放送局、総務省などから66名ほどの方々が参加された。
[1]デジタルTV放送の研究開発と海外展開
①文字多重放送の開発によって、データをテレビ電波に乗せる研究を行った。これによって誤り訂正、TV伝送路の特性などを学んだ。
②BSデジタル放送の研究開発では、経営陣との間で意見が合わず苦労した。研究所は経営を斟酌するのではなく技術を極めることが使命であることを実感した。
③地上デジタル放送(ISDB-T)の開発では移動体受信の重要性に注目した。欧州で音声放送に使われていたOFDM方式をTV放送に取り入れ、セグメントに分けて伝送する方式を考えた。
④1997年頃から、日本方式の海外展開を開始した。アジアではうまくいかず、欧州方式に勝てなかった。1998年には、ブラジルに対して日本方式を紹介した。ブラジルにおいては、HDTVに詳しいBittencourt氏が、米国、欧州、日本の3方式の比較実験を行い、その結果を公表した。結果は日本方式が一番優れていたものであった。
ブラジルの評は、「米国の言うことは嘘、欧州は日本方式は実現できないと悪口を言う、日本は何の反応もない」というものであった。きちんと説明をすることが重要である。
⑤その後、総務省やARIBと協力してブラジルへの働きかけを続けて、2006年に正式にブラジルは日本方式の採用を決定した。それ以降、2007年にペルー、チリにおいて伝送実験を公開した。この間、欧州勢の巻き返しによってコロンビアが欧州方式となってしまうが、総務省の努力により、2009-2010年にかけて、それ以外の南米諸国のすべてが日本方式となる。
⑥普及活動で大切なことは、国の支援を得て、本当に相手の国のことを考えてやること、相手国の技術者と緊密な関係を築くこと、研究開発のレベルから共同すること、国際規格の機関での活動などが重要である。
[2]研究開発マネジメントと技術立国日本への提言
①資源のない日本にとって国際競争に勝つためには研究開発力の強化が必須である。
技術進歩は速く、部下のほうが上司よりも正しい判断ができる場合も多い。経営方針に沿ったやり方だけではうまくいかない。ある種の余裕と職場環境も必要。
②研究開発はテーマの設定が最も重要。市場に出て潜在ニーズの探索し、大学の研究にテーマの芽はないかを捜す。テーマ設定は現場からのボトムアップが必要。最新技術に最も敏感なアンテナを持っているのは若手研究者である。
③今求められているのは、技術イノベーションではなく、組織イノベーションである。組織風土の改革には外部評価の導入が必要。日本の企業では行われていないが、360度評価によって透明性を実現することが重要。国際競争力の強化は必須。国際標準化、海外との共同研究、若手研究者の相互交流、人脈の構築、語学の強化など。
④全体に日本の組織は衰退している。現場の力が低下している。真実を見極め主張できる人材と、それを受け入れる風土、組織を最適運用できるトップが必須である。技術立国たるには、正しい企業理念が必要である。
(感想)
南米での日本放送方式の普及という快挙の裏話を聞くことができたのは、大変興味深かった。
また、最近の日本の組織の低迷についての分析と提言には傾聴すべき点が多かった。我々の課題は「技術イノベーションではなく組織イノベーションである。」との言葉は印象的であった。
大学においても、最近の学生の内向きの傾向は、大変気になるところである。どうしたら技術立国日本をよみがえさせることができるのか、色々と深く考えさせられる3時間のお話であった。
なお、この講演は、来年の2月3日にも東京にて開催される予定となっている。

[1]デジタルTV放送の研究開発と海外展開
①文字多重放送の開発によって、データをテレビ電波に乗せる研究を行った。これによって誤り訂正、TV伝送路の特性などを学んだ。
②BSデジタル放送の研究開発では、経営陣との間で意見が合わず苦労した。研究所は経営を斟酌するのではなく技術を極めることが使命であることを実感した。
③地上デジタル放送(ISDB-T)の開発では移動体受信の重要性に注目した。欧州で音声放送に使われていたOFDM方式をTV放送に取り入れ、セグメントに分けて伝送する方式を考えた。
④1997年頃から、日本方式の海外展開を開始した。アジアではうまくいかず、欧州方式に勝てなかった。1998年には、ブラジルに対して日本方式を紹介した。ブラジルにおいては、HDTVに詳しいBittencourt氏が、米国、欧州、日本の3方式の比較実験を行い、その結果を公表した。結果は日本方式が一番優れていたものであった。
ブラジルの評は、「米国の言うことは嘘、欧州は日本方式は実現できないと悪口を言う、日本は何の反応もない」というものであった。きちんと説明をすることが重要である。
⑤その後、総務省やARIBと協力してブラジルへの働きかけを続けて、2006年に正式にブラジルは日本方式の採用を決定した。それ以降、2007年にペルー、チリにおいて伝送実験を公開した。この間、欧州勢の巻き返しによってコロンビアが欧州方式となってしまうが、総務省の努力により、2009-2010年にかけて、それ以外の南米諸国のすべてが日本方式となる。
⑥普及活動で大切なことは、国の支援を得て、本当に相手の国のことを考えてやること、相手国の技術者と緊密な関係を築くこと、研究開発のレベルから共同すること、国際規格の機関での活動などが重要である。
[2]研究開発マネジメントと技術立国日本への提言
①資源のない日本にとって国際競争に勝つためには研究開発力の強化が必須である。
技術進歩は速く、部下のほうが上司よりも正しい判断ができる場合も多い。経営方針に沿ったやり方だけではうまくいかない。ある種の余裕と職場環境も必要。
②研究開発はテーマの設定が最も重要。市場に出て潜在ニーズの探索し、大学の研究にテーマの芽はないかを捜す。テーマ設定は現場からのボトムアップが必要。最新技術に最も敏感なアンテナを持っているのは若手研究者である。
③今求められているのは、技術イノベーションではなく、組織イノベーションである。組織風土の改革には外部評価の導入が必要。日本の企業では行われていないが、360度評価によって透明性を実現することが重要。国際競争力の強化は必須。国際標準化、海外との共同研究、若手研究者の相互交流、人脈の構築、語学の強化など。
④全体に日本の組織は衰退している。現場の力が低下している。真実を見極め主張できる人材と、それを受け入れる風土、組織を最適運用できるトップが必須である。技術立国たるには、正しい企業理念が必要である。
(感想)
南米での日本放送方式の普及という快挙の裏話を聞くことができたのは、大変興味深かった。
また、最近の日本の組織の低迷についての分析と提言には傾聴すべき点が多かった。我々の課題は「技術イノベーションではなく組織イノベーションである。」との言葉は印象的であった。
大学においても、最近の学生の内向きの傾向は、大変気になるところである。どうしたら技術立国日本をよみがえさせることができるのか、色々と深く考えさせられる3時間のお話であった。
なお、この講演は、来年の2月3日にも東京にて開催される予定となっている。

by sakuraimac
| 2011-12-04 01:18
| 講演会
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