2012年 07月 08日
ドイツ参謀本部 |
鋭い評論で人気の高かった渡部昇一氏の初期の著作に、「ドイツ参謀本部」というものがある。
地味であまり面白い本ではないのだが、数ある渡辺氏の著作の中でも、もっとも優れているもののひとつではないかと私は思ってきた。1974年の著作であるが、著者ご自身による要約のポイントを簡単にご紹介させていただきたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーー要約ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
当時、欧州ではナポレオン軍の強さが猛威をふるっていた。その強さの秘密は革命後の徴兵制による大量動員体制とナポレオンの天才指導能力にあった。
一方、プロイセンは弱体化した軍を立て直すべく、参謀本部の新設を行なった。ナポレオンは、情報を一手に掌握し相談する相手をもたず、すべて自分が直接に命令を下していた。個々の戦闘では天才ナポレンオには勝てないのだが、プロイセンの優秀なる参謀たちは、戦闘に負けつづけて、最後の最後に満を待してナポレオンを打ち破る(ワールテルローの戦い)。
その後、ドイツ参謀本部は、ビスマルク首相とモルトケ参謀総長の絶妙のコンビにてドイツ統一を成し遂げて絶頂期に至る。プロイセンの参謀本部が近代史を左右するほどの意味を持つ組織上の大発明(いわゆるラインとスタッフという概念はここから発している)と言われるゆえんである。
ビスマルが退いてからは、ドイツは有能な政治リーダーを持てず、参謀本部だけに人材が集中してしまい、バランスがくずれた。その結果として、第一次大戦では大敗を喫することとなった。
その苦い記憶から、今度は強力なリーダーシップを国民は渇望した。そこに現れたのがアドルフヒトラーである。皮肉なことにヒトラーは参謀本部をいっさい無視し、またもやここでバランスが大きく崩れた。その結果が第二次大戦の無残な敗戦につながる。
ドイツ参謀本部の発明は、軍事上の分野にとどまらないところが、今日的意味を持っている。今日あらゆる大組織に見られるテクノストラクチャの構造は、この組織から発生していると言っても過言ではない。ドイツ参謀本部の歴史は組織におけるリーダーとスタフのバランスの難しさを示して余すところがない。
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この本を読んだ当時は、このような歴史への視点もあるのかと大変新鮮に感じた思い出がある。
優れたリーダーが組織の繁栄を導くことは世の中ではさかんに強調されていることであるが、強いリーダーを渇望したドイツ国民が、その結果としてヒトラーを生み出したというのは、実に皮肉な歴史の結末でもある。
日本人は、元来、強力なリーダーを求める国民性は持っていないようなので、ヒトラーを生み出す心配はなさそうであるが、一方では、有事の際のリーダーシップのなさは、海外からは指摘され続けている。
過去を見れば、成功した明治維新、何とか切り抜けた日露戦争、大失敗した太平洋戦争、いずれの場合においても日本には強力な全体リーダーはいなかった。国を動かしたのは、危機意識を持った若い小リーダー(中堅層)たちであった。
日本史は門外漢であるが、独裁的なリーダーシップを持って改革を進めた人物は織田信長くらいしか思い浮かばない。今後の日本の将来を考えたとき、強力なリーダーが出現するという可能性はまずないだろうから、日本が衰退するのを防ぐには、問題意識と危機意識を持った中堅層に期待するより他はない。
これからの、中堅層、そして若い人々の行動力におおいに期待したいところである。それを阻止しているのが、団塊の世代をはじめとする高齢者層の存在であるとの指摘は耳の痛いところである。せめて、将来に過去の負の遺産を残さないように我々は努力すべきであると思うこの頃である。

地味であまり面白い本ではないのだが、数ある渡辺氏の著作の中でも、もっとも優れているもののひとつではないかと私は思ってきた。1974年の著作であるが、著者ご自身による要約のポイントを簡単にご紹介させていただきたい。
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当時、欧州ではナポレオン軍の強さが猛威をふるっていた。その強さの秘密は革命後の徴兵制による大量動員体制とナポレオンの天才指導能力にあった。
一方、プロイセンは弱体化した軍を立て直すべく、参謀本部の新設を行なった。ナポレオンは、情報を一手に掌握し相談する相手をもたず、すべて自分が直接に命令を下していた。個々の戦闘では天才ナポレンオには勝てないのだが、プロイセンの優秀なる参謀たちは、戦闘に負けつづけて、最後の最後に満を待してナポレオンを打ち破る(ワールテルローの戦い)。
その後、ドイツ参謀本部は、ビスマルク首相とモルトケ参謀総長の絶妙のコンビにてドイツ統一を成し遂げて絶頂期に至る。プロイセンの参謀本部が近代史を左右するほどの意味を持つ組織上の大発明(いわゆるラインとスタッフという概念はここから発している)と言われるゆえんである。
ビスマルが退いてからは、ドイツは有能な政治リーダーを持てず、参謀本部だけに人材が集中してしまい、バランスがくずれた。その結果として、第一次大戦では大敗を喫することとなった。
その苦い記憶から、今度は強力なリーダーシップを国民は渇望した。そこに現れたのがアドルフヒトラーである。皮肉なことにヒトラーは参謀本部をいっさい無視し、またもやここでバランスが大きく崩れた。その結果が第二次大戦の無残な敗戦につながる。
ドイツ参謀本部の発明は、軍事上の分野にとどまらないところが、今日的意味を持っている。今日あらゆる大組織に見られるテクノストラクチャの構造は、この組織から発生していると言っても過言ではない。ドイツ参謀本部の歴史は組織におけるリーダーとスタフのバランスの難しさを示して余すところがない。
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この本を読んだ当時は、このような歴史への視点もあるのかと大変新鮮に感じた思い出がある。
優れたリーダーが組織の繁栄を導くことは世の中ではさかんに強調されていることであるが、強いリーダーを渇望したドイツ国民が、その結果としてヒトラーを生み出したというのは、実に皮肉な歴史の結末でもある。
日本人は、元来、強力なリーダーを求める国民性は持っていないようなので、ヒトラーを生み出す心配はなさそうであるが、一方では、有事の際のリーダーシップのなさは、海外からは指摘され続けている。
過去を見れば、成功した明治維新、何とか切り抜けた日露戦争、大失敗した太平洋戦争、いずれの場合においても日本には強力な全体リーダーはいなかった。国を動かしたのは、危機意識を持った若い小リーダー(中堅層)たちであった。
日本史は門外漢であるが、独裁的なリーダーシップを持って改革を進めた人物は織田信長くらいしか思い浮かばない。今後の日本の将来を考えたとき、強力なリーダーが出現するという可能性はまずないだろうから、日本が衰退するのを防ぐには、問題意識と危機意識を持った中堅層に期待するより他はない。
これからの、中堅層、そして若い人々の行動力におおいに期待したいところである。それを阻止しているのが、団塊の世代をはじめとする高齢者層の存在であるとの指摘は耳の痛いところである。せめて、将来に過去の負の遺産を残さないように我々は努力すべきであると思うこの頃である。

by sakuraimac
| 2012-07-08 13:12
| 歴史
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