2013年 05月 08日
平均律クラヴィア曲集 |
家に誰も弾かなくなったスタンドピアノがあるのだが、家内が何故か処分もせずに毎年律儀に調律を依頼している。先日も長年お世話になっている調律師がやってきた。料金は1万5千円で2時間ほどかけて丁寧な作業をしていった。ピアノのキーは白鍵が52、黒鍵が36、計88もあるので、調律すべき弦は88にもなり、調律は結構大変な作業となる。
ちなみに、バイオリンなどの弦楽器は、弦が4本しかないので、音楽会でオーケストラの演奏前に目にするように、調律は演奏者自らが行い瞬時に終わってしまう。
楽器の中では鍵盤楽器だけが、すべての音程が固定されており、調律が演奏者自身でできないものとなっている。現在は、十二平均律が使われているが、バッハの時代以前は音楽には色々な音律があった。その中で響きが最も美しいものが、純性律と呼ばれるもので、各音の周波数が整数比にあるため、和音の響きが美しい。ところが純性律では、転調した際に微妙に音程が変わるので、固定された音程の鍵盤楽器では対応ができない。そこで、転調しても、音程が固定されている平均律が採用されるようになった。
バッハの平均律クラヴィア曲集は、このような事情を背景に、十二平均律によって、すべての変調、すなわち、ハ長調、ハ短調、嬰ハ単調から始まりロ短調に至るまでの、24の変調曲を集めたものである。その構成を見ると、おそらく、一般に平均律の理解を深めてもらうための練習曲の意味合いもあったものと想像される。ところが、これが、素晴らしい出来の曲集となり、現在ではピアノの旧約聖書とまで賞賛されるものとなっている。
第1曲は、グノーがアベマリアの伴奏曲として使ったので、世の中にも広く知られている。
原題は「The Well-Tempered Clavier」であり、直訳すれば「よく調律された鍵盤楽器」となる。平均律というのは、いくつかあるWell-Temperedの手法の中で実際に使われているものということで、日本語はあえて意訳をしている。
私は、この曲を iTune に入れて、仕事に疲れて一休みしたり、昼寝をするときにPCのスピーカから流している。正直のところ、退屈な部分も無い訳ではないのだが、心を休めるには最適な音楽である。以前、心療内科に行ったときもこの音楽が流れていた。よい選曲をするものだなあと感心した記憶がある。
最近は、響きのよい純性律を復活させようという動きもあるそうだが、何気なく聞いている音楽にも、色々な努力の歴史の上になり立っていることを、ピアノ調律師さんの仕事を見ながら思い出だした次第である。
<補足>十二平均律
ピアノの中央のラの音(A4)は周波数が440Hzに定められている。そのひとつ上のラ音(A5)は2倍の880Hzとなる。これをオクターブ(倍音)と呼ぶ。1オクターブの間には、#♭の音を入れて12個の音ある。これを、等分に周波数を分割して割り当てたものが、十二平均律である。すなわち、A4から始まる音は順に、周波数が、2^1/12倍だけ上がっていき、12番目の音がちょうど倍音の周波数となる。
単純な話なのだが、ここに至るまで、様々な人々が色々な試みを行ってきた。それらを統括して、平均律というものを音楽の基礎として確立・定着したという意味でも、平均律クラヴィア曲集の意義は大きいものとされている。
<訂正>
音楽の専門家の方から指摘されたのですが,バッハの原曲は平均律ではなくヴェルクマイスター調律法であり,これを平均律と訳したのは世界的な大誤訳である,とお教えいただきました。上記の私の理解は大きな間違いだったようなので,ここに訂正させていただきたく思います。(2013/6/13)

ちなみに、バイオリンなどの弦楽器は、弦が4本しかないので、音楽会でオーケストラの演奏前に目にするように、調律は演奏者自らが行い瞬時に終わってしまう。
楽器の中では鍵盤楽器だけが、すべての音程が固定されており、調律が演奏者自身でできないものとなっている。現在は、十二平均律が使われているが、バッハの時代以前は音楽には色々な音律があった。その中で響きが最も美しいものが、純性律と呼ばれるもので、各音の周波数が整数比にあるため、和音の響きが美しい。ところが純性律では、転調した際に微妙に音程が変わるので、固定された音程の鍵盤楽器では対応ができない。そこで、転調しても、音程が固定されている平均律が採用されるようになった。
バッハの平均律クラヴィア曲集は、このような事情を背景に、十二平均律によって、すべての変調、すなわち、ハ長調、ハ短調、嬰ハ単調から始まりロ短調に至るまでの、24の変調曲を集めたものである。その構成を見ると、おそらく、一般に平均律の理解を深めてもらうための練習曲の意味合いもあったものと想像される。ところが、これが、素晴らしい出来の曲集となり、現在ではピアノの旧約聖書とまで賞賛されるものとなっている。
第1曲は、グノーがアベマリアの伴奏曲として使ったので、世の中にも広く知られている。
原題は「The Well-Tempered Clavier」であり、直訳すれば「よく調律された鍵盤楽器」となる。平均律というのは、いくつかあるWell-Temperedの手法の中で実際に使われているものということで、日本語はあえて意訳をしている。
私は、この曲を iTune に入れて、仕事に疲れて一休みしたり、昼寝をするときにPCのスピーカから流している。正直のところ、退屈な部分も無い訳ではないのだが、心を休めるには最適な音楽である。以前、心療内科に行ったときもこの音楽が流れていた。よい選曲をするものだなあと感心した記憶がある。
最近は、響きのよい純性律を復活させようという動きもあるそうだが、何気なく聞いている音楽にも、色々な努力の歴史の上になり立っていることを、ピアノ調律師さんの仕事を見ながら思い出だした次第である。
<補足>十二平均律
ピアノの中央のラの音(A4)は周波数が440Hzに定められている。そのひとつ上のラ音(A5)は2倍の880Hzとなる。これをオクターブ(倍音)と呼ぶ。1オクターブの間には、#♭の音を入れて12個の音ある。これを、等分に周波数を分割して割り当てたものが、十二平均律である。すなわち、A4から始まる音は順に、周波数が、2^1/12倍だけ上がっていき、12番目の音がちょうど倍音の周波数となる。
単純な話なのだが、ここに至るまで、様々な人々が色々な試みを行ってきた。それらを統括して、平均律というものを音楽の基礎として確立・定着したという意味でも、平均律クラヴィア曲集の意義は大きいものとされている。
<訂正>
音楽の専門家の方から指摘されたのですが,バッハの原曲は平均律ではなくヴェルクマイスター調律法であり,これを平均律と訳したのは世界的な大誤訳である,とお教えいただきました。上記の私の理解は大きな間違いだったようなので,ここに訂正させていただきたく思います。(2013/6/13)

by sakuraimac
| 2013-05-08 13:19
| 音楽
|
Comments(8)
多忙にかまけて久しぶりの投稿となりました。私が持っているCDは、グレン・グールドのもので・・・あったはず。記憶違いであるといけないのでアマゾンで調べたら、懐かしい見覚えのあるCDジャケットが写っていました。 驚いたのは、数百円という売値でした。久しぶりに彼の弾きうなりを聞いてみようかと思います。彼は、伝説の奇人でCDからも彼のつぶやきのような「うなり声」が耳をすますと聞こえてくるのです。中村紘子さんの「ピアニストという蛮族がいる」という名著の中にもグールドの記述があったと思います。それにしても、中村さんの夫君の芥川賞作家の庄司薫さんはどうしているのでしょうか。 学生諸君には、彼の「赤ずきんちゃん気をつけて」等薫君シりーズ4部作の一読を勧めます。個人的には「白鳥の歌なんか聞こえない」がこの年になって見ると、とても深い示唆にとんだ作品であったことに気づきます。疾風怒濤の青春時代は今も昔も変わりません。授業・研究・就活・クラブ活動、大変でしょうが元気に乗り切ってほしいものです。
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jayjayさん、おひさしぶりの投稿ありがとうございます。
グールドはゴールドベルグ変奏曲が私は好きです。平均律はリヒテルを勧める人が多いようですね。
庄司薫さんとは、なつかしい名前が出てきました。文学にはうとい私ですが、「赤ずきんちゃん気をつけて」は楽しく読めて、こんな小説が芥川賞を受けられるのかと、大変驚いた記憶があります。ずいぶん昔のことで、本も処分してしまいましたが、Amazonで見たら、文庫本になっているのですね。
グールドはゴールドベルグ変奏曲が私は好きです。平均律はリヒテルを勧める人が多いようですね。
庄司薫さんとは、なつかしい名前が出てきました。文学にはうとい私ですが、「赤ずきんちゃん気をつけて」は楽しく読めて、こんな小説が芥川賞を受けられるのかと、大変驚いた記憶があります。ずいぶん昔のことで、本も処分してしまいましたが、Amazonで見たら、文庫本になっているのですね。
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
小出様,貴重なコメントどうもありがとうございます。「バッハの平均律クラヴィア曲集は今の平均律とは全く異なり,平均律と訳したのは世界的な大誤訳だといわれて久しい。」ということはシロウトの私は全く知りませんでした。専門的なお立場からのご指摘,感謝いたします。
「平均律と訳したのは世界的な大誤訳だ」と言い立てて、鬼の首を取ったようにしている方もいますが、実質は平均律の意味で、誤訳ではありません。実際、グールドもリヒテルもバルヒャもみんな平均律に調律したピアノあるいはチェンバロで演奏し録音しています。私自身で、CDからC~Bの各音のWAVEデータをとってFFT(周波数)解析をして確認しました。オクターブが12音で構成される時の最適音律が平均律だということと、多少違いのある音律もすべて許容されることを「音律と不確定性原理」で説明しました。人間にも、いや物理的にもある音の周波数を完全に特定することは出来ないことが不確定性原理で明らかなのです。
私は建築の専門です。ただ、音楽とりわけバッハの音楽が好きで、いろいろやっているうちにmidiやホームページに発展してきています。音楽は何処まで行っても専門ではないので、ただの趣味の領域です。
そうなんですか。でも、世の中には、専門家より詳しい素人の方々がたくさんおられますよね。藤田様もそのような方々のお一人のようで。私もバッハは大好きです。レコード(今はCDですが)の半分はバッハです。

