2013年 08月 26日
風立ちぬ |
久しぶりに映画館に行って話題の「風立ちぬ」を見てきた。名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマであるが,チケット予約掲示板を見たら,11 本の上映中の映画の中では,風立ちぬが圧倒的に1番であった。
宮崎駿さんの作品としては「崖の上のポニョ」以来5年ぶりとのことである。映画はとてもシンプルで美しかった。他の宮崎作品に比べても,あまり深く考えずに素直に物語を追うことができた。宮崎さん独特の細部の描写もあいかわらず秀逸で,登場人物では上司の黒川夫妻が実にいい味を出していて印象に残った。
宮崎作品は,結構難解なところがあるのだが,今回は監督の意向が素直に伝わってきて,また宮崎さんの美意識と感性がとてもよく出ていたと思う。
ひとつだけ残念だったのは、堀越二郎氏の傑作、世界一の性能を実現した名機ゼロ戦に関する描写が,拍子抜けするほどあっさりと省略されてしまっていたことである。それを期待して見にいったのだが,完全に肩透かしをくらった感がした。(ゼロ戦をわざと無視したのも宮崎さんの美意識のひとつなのだろうか?)
ところで,個人の感想をこうして記載すると,では他の人々はどう思っているのだろうということがいつも気になってしまう。(一人我が道を行くという自信が持てない悲しさか)
調べるとなると,とりあえずは,ネットでとなるのだが,これが中々やっかいである。自分の研究分野なら丁寧に調べるのだが,たかが映画(宮崎さんゴメンナサイ)の評判を調べるのに,そんなに労力を使う気は全く起こらない。とにかく,ネットは,ゴミ情報の山でイヤになる。評論家の言葉もあてにならないし,総評みたいなものも,編集加工されているのでどこまで皆の声を繁栄しているのか全く分からない。
その中で,私が結構評価しているのが,Yahoo 知恵袋である。ここの住人は,シロウトだが暇で趣味にハマっている人がかなり多い(こういう人々は専門家はだしで決してバカにはできない)。それらの人々が,自分の専門分野に関しては、ゴミやホコリをすべて捨て去って,よく出来た感想のみを選んで,生情報として提示してくれる。ちなみに,Yahoo 本体や Google ではなく,Yahoo知恵袋を開いて,「風立ちぬ 感想」で検索してみると,そのようなよく出来た生情報が並んでいる。
話は飛ぶが、会社組織でも,えらくなると,雑多な現場の生情報を見たり聞いたりしている暇はない。勢い,不要な情報を切り捨てて価値ある情報をフィルタリングして伝える中間層の働きが重要となる。(その中間層の機能が低いととんでもないことになるのだが)
これは,我々の研究している情報処理の観点からも極めて興味深い事柄である。我々にとって最も役立つデータとは,高性能なフィルターによって不要なノイズが除去されており,かつ加工される前の生のデータである。加工のアルゴリズムの開発が主な研究テーマなので,すでに加工されてしまったデータは役にたたない。
まして、ノイズを含んだまま加工されたデータは最悪である。役に立たないどころか、誤った結論を導くので大きな弊害となる。
ノイズ除去の情報フィルタリング機能が優れていること,加工されてない生データを提供してくること,この2点が,私がYahoo知恵袋を評価する最大の理由である。(ネットにはあまり詳しくないので,他にもこのような機能を持ったサイトが色々あるのかもしれないが・・・)
で,私の映画感想はどういう位置づけになったのかということであるが,結局のところ,よく分からなかった。そんなに的はずれでもなかったようだが,黒川夫妻を誉めていた人も,ゼロ戦を残念がっていた人もあまりいなかった。これは私の個人的趣味だったのかもしれない。
ただ,発見したのは,当時の歴史の背景知識がない若い人々には,我々のようには何も考えずにごく自然に理解するのはかなり難しいのだということであった。
また,理解されずとも構わないという多少開き直った宮崎さんの美意識は,理解する人と理解しない人がいるのだということも分かった。「ピカソの絵を見て,素晴らしい芸術だと思う人もいれば,全く理解ができない人もいるのと同じだ。」という説明は中々説得力があった。
<追記> 8/26放送のNHKの番組プロフェッショナルで,宮崎駿さんがこの映画を作った時の様子が紹介されていた。宮崎さんが、最初に,堀越二郎の話を出したら,周囲から「戦争を賛美する映画を作るのか」と言われてずいぶんと悩んだことが紹介されていた。
ゼロ戦に全く触れていないこと,そして歴史背景の説明があっさりしすぎているのは,彼の美意識というよりは,そういう葛藤が背景にあったのだということを,番組を見て初めて知った。映画を見て何か納得のいかない思いをした人も少なくないのは,宮崎さん自身のこの葛藤のせいなのかもしれない。
私にとっては,この作品は、素直な美しい映画であった。(ただ傑作と言えるのかどうかはよく分からない。確実に傑作だと言えるのは、やはり宮崎さんの初期の作品 「となりのトトロ」だと思っている。)
宮崎駿さんの作品としては「崖の上のポニョ」以来5年ぶりとのことである。映画はとてもシンプルで美しかった。他の宮崎作品に比べても,あまり深く考えずに素直に物語を追うことができた。宮崎さん独特の細部の描写もあいかわらず秀逸で,登場人物では上司の黒川夫妻が実にいい味を出していて印象に残った。
宮崎作品は,結構難解なところがあるのだが,今回は監督の意向が素直に伝わってきて,また宮崎さんの美意識と感性がとてもよく出ていたと思う。
ひとつだけ残念だったのは、堀越二郎氏の傑作、世界一の性能を実現した名機ゼロ戦に関する描写が,拍子抜けするほどあっさりと省略されてしまっていたことである。それを期待して見にいったのだが,完全に肩透かしをくらった感がした。(ゼロ戦をわざと無視したのも宮崎さんの美意識のひとつなのだろうか?)
ところで,個人の感想をこうして記載すると,では他の人々はどう思っているのだろうということがいつも気になってしまう。(一人我が道を行くという自信が持てない悲しさか)
調べるとなると,とりあえずは,ネットでとなるのだが,これが中々やっかいである。自分の研究分野なら丁寧に調べるのだが,たかが映画(宮崎さんゴメンナサイ)の評判を調べるのに,そんなに労力を使う気は全く起こらない。とにかく,ネットは,ゴミ情報の山でイヤになる。評論家の言葉もあてにならないし,総評みたいなものも,編集加工されているのでどこまで皆の声を繁栄しているのか全く分からない。
その中で,私が結構評価しているのが,Yahoo 知恵袋である。ここの住人は,シロウトだが暇で趣味にハマっている人がかなり多い(こういう人々は専門家はだしで決してバカにはできない)。それらの人々が,自分の専門分野に関しては、ゴミやホコリをすべて捨て去って,よく出来た感想のみを選んで,生情報として提示してくれる。ちなみに,Yahoo 本体や Google ではなく,Yahoo知恵袋を開いて,「風立ちぬ 感想」で検索してみると,そのようなよく出来た生情報が並んでいる。
話は飛ぶが、会社組織でも,えらくなると,雑多な現場の生情報を見たり聞いたりしている暇はない。勢い,不要な情報を切り捨てて価値ある情報をフィルタリングして伝える中間層の働きが重要となる。(その中間層の機能が低いととんでもないことになるのだが)
これは,我々の研究している情報処理の観点からも極めて興味深い事柄である。我々にとって最も役立つデータとは,高性能なフィルターによって不要なノイズが除去されており,かつ加工される前の生のデータである。加工のアルゴリズムの開発が主な研究テーマなので,すでに加工されてしまったデータは役にたたない。
まして、ノイズを含んだまま加工されたデータは最悪である。役に立たないどころか、誤った結論を導くので大きな弊害となる。
ノイズ除去の情報フィルタリング機能が優れていること,加工されてない生データを提供してくること,この2点が,私がYahoo知恵袋を評価する最大の理由である。(ネットにはあまり詳しくないので,他にもこのような機能を持ったサイトが色々あるのかもしれないが・・・)
で,私の映画感想はどういう位置づけになったのかということであるが,結局のところ,よく分からなかった。そんなに的はずれでもなかったようだが,黒川夫妻を誉めていた人も,ゼロ戦を残念がっていた人もあまりいなかった。これは私の個人的趣味だったのかもしれない。
ただ,発見したのは,当時の歴史の背景知識がない若い人々には,我々のようには何も考えずにごく自然に理解するのはかなり難しいのだということであった。
また,理解されずとも構わないという多少開き直った宮崎さんの美意識は,理解する人と理解しない人がいるのだということも分かった。「ピカソの絵を見て,素晴らしい芸術だと思う人もいれば,全く理解ができない人もいるのと同じだ。」という説明は中々説得力があった。
<追記> 8/26放送のNHKの番組プロフェッショナルで,宮崎駿さんがこの映画を作った時の様子が紹介されていた。宮崎さんが、最初に,堀越二郎の話を出したら,周囲から「戦争を賛美する映画を作るのか」と言われてずいぶんと悩んだことが紹介されていた。
ゼロ戦に全く触れていないこと,そして歴史背景の説明があっさりしすぎているのは,彼の美意識というよりは,そういう葛藤が背景にあったのだということを,番組を見て初めて知った。映画を見て何か納得のいかない思いをした人も少なくないのは,宮崎さん自身のこの葛藤のせいなのかもしれない。
私にとっては,この作品は、素直な美しい映画であった。(ただ傑作と言えるのかどうかはよく分からない。確実に傑作だと言えるのは、やはり宮崎さんの初期の作品 「となりのトトロ」だと思っている。)
by sakuraimac
| 2013-08-26 22:35
| 娯楽・趣味
|
Comments(1)
Commented
by
sakuraimac at 2013-08-29 19:07
「宮崎駿さんは、戦闘のシーンを描かせたら実にうまい。自分が最高の戦争映画を作れることを自覚している。だから懊悩する。」という回答が、知恵袋にありました。実にナルホドと思いました。風の谷のナウシカでも戦闘シーンは格好よかったですものね。(原作の漫画はもっとすごかった。)
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