2013年 10月 20日
超ひも理論 |
9/23にNHKが放送したスペシャル番組「神の数式第2回」が非常に興味深く印象に残っている。
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0922/
現在の物理学の最先端にある難解な超弦理論(超ひも理論、Superstring theory)について、物理学者達がたどってきた道のりとその将来への可能性について分かりやすく説明がなされていた。科学に多少なりとも関心のある人にとっては、知的興味を大いに刺激される大変優れた番組であったと思う。
世界は微小なひもから成り立つという超弦理論は、はじめはほとんど注目されていなかった。それが、1984年にシュワルツとグリーンが超弦理論の数式から、相対性理論と素粒子論の数式を導き出すことに成功した瞬間に、世界中の物理学者の関心が一挙に集まり、超弦理論が現代物理学の最先端に躍り出た。その時の描写はとても印象的であった。
私は物理学には全くのシロウトであり、特に素粒子論については全く理解はしていないのだが、テレビの録画画面からその数式を写し取ってみた。
超弦理論の式: Z=∫[Dg][DX][DΨ]exp{-1/2π∫Md^2σ√h[hαβ∂αXμ-iΨμραΨμ]}
から複雑な計算を経て、
一般相対性理論の式:Rμv-1/2gμvR=KTμv と
素粒子論の式: 1/4FμvFμv+(iΨDΨ+h.c.)+(ΨiYijΨjφ+h.c.)+|Dμφ|^2-V(φ)
が見事に導き出されてくる。
この結果に、物理学者達は目を覚まされるような衝撃を受け、革命あるいは奇跡だと、超弦理論は大絶賛を受ける。以来、この超弦理論は物理学の花形となり、多くの物理学者達が挑戦するようになり、現在も発展を続けている。
というのが、上記のテレビ番組から、得た知識である。この番組に刺激されて、今まで敬遠していた、超弦理論の入門書を何冊か読んでみた。以下、シロウトなりに理解した概要を書いてみたい。(シロウトのにわか勉強につき、間違いやいいかげんなところがあることはあらかじめお許しを)
20世紀の物理学は相対性理論と量子力学の2つが大きな柱となってきた。相対性理論は主に宇宙規模の問題に、また量子力学は分子レベル以下の極微の世界の問題を解くものとして、実用的には住み分けが行われてきた。
一方、理論物理の世界では双方の矛盾を統合する理論(量子重力理論)を構築することに、強い関心が持たれてきた。ホーキング博士のブラックホールに関する業績は有名である。この量子重力理論が宇宙の問題の解決につながるとして、一般の人々の関心をも集め出したのは、宇宙のビッグバン以前の状況が、インフレーション理論で説明されるようになってからである。
インフレーション理論では、宇宙は、量子力学の領域である極微の領域から一挙に光速以上の速さで膨張して瞬時にビックバンに至り、その後も加速膨張を続けて今の宇宙が出来たというものである。宇宙が出来上がった過程を説明するためには、相対性理論と量子力学の住み分けは許されず、両者を統合できる理論が、宇宙の謎を解明する上でも求められ始めた訳である。
相対性理論と量子力学を統合できる可能性のある最も有望な理論が、現在は超弦理論ということとなっている。
ところで、20世紀の物理学には相対性理論と量子力学の他に、もう一つ素粒子論の分野がある。物質とは何から出来ているかその最小構成要素を追求していく学問である。現在は、素粒子としては、6種類のクォークと6種類のレプトン、4種類のゲージボゾン、そしてヒッグス粒子と、全部で17種類が存在している。
超弦理論は、これらの基本的な粒子を構成する要素として、極微のサイズで振動する弦(string)を仮定する。その弦の振動によって、これらの17種類の粒子が出来上がっていると考えるものである。
17種類の素粒子が出来上がる弦の振動の方向性、特に光速で飛ぶ光子が質量を持たない条件を計算すると、弦の存在する領域の次元数は9次元であるということが数学的に導かれる。
では、現実の我々の住む世界の3次元との差の6次元とは一体何なのか。ここで、すでに数学者のカラビが研究しヤウが証明していた6次元の空間の理論を応用して、6次元が縮退(コンパクト化)されているという理論が提唱される。これが、カラビ・ヤウ空間と呼ばれるものである。我々の住む世界が9次元というのではなく、弦の世界の9次元はコンパクト化されて我々には3次元にしか見えないということらしい。
一方、弦の動きに関して、弦は膜(ブレーン)に張り付いているというブレーン理論が提案される。ブレーンも弦と同じく宇宙を構成する要素であると考える。
現在、ブレーン理論を使って宇宙の構成を説明するモデルを作ろうと多くの物理学者が取り組んでいる。
色々な提案がなされているが、ブレーン宇宙論からは、宇宙はひとつではなく、たくさん存在しており、理論計算によると、ブレーン宇宙の数は、10^200個にも及ぶという。(マルチバース宇宙)
また、ビッグバンは2つのブレーンが衝突したものであり、永遠に繰り返されるので、宇宙には始まりはなく永遠に循環する。さらには、ブレーンの張力によって、暗黒エネルギーの存在を考えなくとも宇宙の加速膨張を説明できるという提案もある。
ただ、この花々しい超弦理論の進展に疑問を呈する物理学者もいる。
まず、弦の大きさが、極微(プランク乗数のレベル)の大きさであり、観測が不可能であることがあげられる。実験観測データが全く得られないしその見込みも立たない。その中で、理論だけがどんどん膨らんでいく。実験の裏付けが無いために、何でもありの世界になってしまっている。それは科学と呼べるものだろうかという批判である。(ウォイト:「ストリング理論は科学か」)
インフレーション理論の提唱者でもある佐藤勝彦氏は面白いことを言っている。「最近のブレーン宇宙論の世界は、オタクの人々が集まって、好き勝手なことを言っているようにも見える。実際に宇宙論の国際会議でも、ブレーン宇宙論と観測宇宙論の話は2つに分かれており、前者の会合が終わると、“ブレーン宇宙論の理論モデルは色々ありますが、それはさておき、現実の宇宙の話に戻ってリアリテイのある話をしましょう”ということになる。」のだそうである。
一方、超弦理論の研究者である大栗博司氏は、実証の難しさを認めつつも、物理の基礎理論が実証されるには長い年月が必要とされてきたことを説く。例えば、ニュートンの万有引力の法則が実証されるのには100年、相対性理論は26年、ヒッグス粒子の検証には半世紀かかっている。必ず、検証される日は来るとして、量子重力理論を確立し、宇宙の誕生の謎にもせまる唯一の理論として、超弦理論の発展に大きな期待を表明している。
批判論も擁護論も、結局は、超弦理論が物理学界で大いに盛り上がっており、多くの物理学者が参加している結果として出てきていると理解してよいようだ。
個人的には、素粒子論というのは、何か複雑で面倒そうなので敬遠してきたのだが、素粒子論から出てきて、何と相対性理論をも内蔵しており、宇宙の誕生の問題に密接つに結びついている超弦理論には、大変興味が湧いてきて知的興奮を覚える。
一番の壁となっている観測実験による検証において、何か革新的なブレークスルーが生まれれば、超弦理論は現実的にも大きく発展できるのではないかと思われる。超弦理論が、宇宙の謎をどこまで解明できるものなのか、シロウトながらその将来がとても楽しみな思いがする。



http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0922/
現在の物理学の最先端にある難解な超弦理論(超ひも理論、Superstring theory)について、物理学者達がたどってきた道のりとその将来への可能性について分かりやすく説明がなされていた。科学に多少なりとも関心のある人にとっては、知的興味を大いに刺激される大変優れた番組であったと思う。
世界は微小なひもから成り立つという超弦理論は、はじめはほとんど注目されていなかった。それが、1984年にシュワルツとグリーンが超弦理論の数式から、相対性理論と素粒子論の数式を導き出すことに成功した瞬間に、世界中の物理学者の関心が一挙に集まり、超弦理論が現代物理学の最先端に躍り出た。その時の描写はとても印象的であった。
私は物理学には全くのシロウトであり、特に素粒子論については全く理解はしていないのだが、テレビの録画画面からその数式を写し取ってみた。
超弦理論の式: Z=∫[Dg][DX][DΨ]exp{-1/2π∫Md^2σ√h[hαβ∂αXμ-iΨμραΨμ]}
から複雑な計算を経て、
一般相対性理論の式:Rμv-1/2gμvR=KTμv と
素粒子論の式: 1/4FμvFμv+(iΨDΨ+h.c.)+(ΨiYijΨjφ+h.c.)+|Dμφ|^2-V(φ)
が見事に導き出されてくる。
この結果に、物理学者達は目を覚まされるような衝撃を受け、革命あるいは奇跡だと、超弦理論は大絶賛を受ける。以来、この超弦理論は物理学の花形となり、多くの物理学者達が挑戦するようになり、現在も発展を続けている。
というのが、上記のテレビ番組から、得た知識である。この番組に刺激されて、今まで敬遠していた、超弦理論の入門書を何冊か読んでみた。以下、シロウトなりに理解した概要を書いてみたい。(シロウトのにわか勉強につき、間違いやいいかげんなところがあることはあらかじめお許しを)
20世紀の物理学は相対性理論と量子力学の2つが大きな柱となってきた。相対性理論は主に宇宙規模の問題に、また量子力学は分子レベル以下の極微の世界の問題を解くものとして、実用的には住み分けが行われてきた。
一方、理論物理の世界では双方の矛盾を統合する理論(量子重力理論)を構築することに、強い関心が持たれてきた。ホーキング博士のブラックホールに関する業績は有名である。この量子重力理論が宇宙の問題の解決につながるとして、一般の人々の関心をも集め出したのは、宇宙のビッグバン以前の状況が、インフレーション理論で説明されるようになってからである。
インフレーション理論では、宇宙は、量子力学の領域である極微の領域から一挙に光速以上の速さで膨張して瞬時にビックバンに至り、その後も加速膨張を続けて今の宇宙が出来たというものである。宇宙が出来上がった過程を説明するためには、相対性理論と量子力学の住み分けは許されず、両者を統合できる理論が、宇宙の謎を解明する上でも求められ始めた訳である。
相対性理論と量子力学を統合できる可能性のある最も有望な理論が、現在は超弦理論ということとなっている。
ところで、20世紀の物理学には相対性理論と量子力学の他に、もう一つ素粒子論の分野がある。物質とは何から出来ているかその最小構成要素を追求していく学問である。現在は、素粒子としては、6種類のクォークと6種類のレプトン、4種類のゲージボゾン、そしてヒッグス粒子と、全部で17種類が存在している。
超弦理論は、これらの基本的な粒子を構成する要素として、極微のサイズで振動する弦(string)を仮定する。その弦の振動によって、これらの17種類の粒子が出来上がっていると考えるものである。
17種類の素粒子が出来上がる弦の振動の方向性、特に光速で飛ぶ光子が質量を持たない条件を計算すると、弦の存在する領域の次元数は9次元であるということが数学的に導かれる。
では、現実の我々の住む世界の3次元との差の6次元とは一体何なのか。ここで、すでに数学者のカラビが研究しヤウが証明していた6次元の空間の理論を応用して、6次元が縮退(コンパクト化)されているという理論が提唱される。これが、カラビ・ヤウ空間と呼ばれるものである。我々の住む世界が9次元というのではなく、弦の世界の9次元はコンパクト化されて我々には3次元にしか見えないということらしい。
一方、弦の動きに関して、弦は膜(ブレーン)に張り付いているというブレーン理論が提案される。ブレーンも弦と同じく宇宙を構成する要素であると考える。
現在、ブレーン理論を使って宇宙の構成を説明するモデルを作ろうと多くの物理学者が取り組んでいる。
色々な提案がなされているが、ブレーン宇宙論からは、宇宙はひとつではなく、たくさん存在しており、理論計算によると、ブレーン宇宙の数は、10^200個にも及ぶという。(マルチバース宇宙)
また、ビッグバンは2つのブレーンが衝突したものであり、永遠に繰り返されるので、宇宙には始まりはなく永遠に循環する。さらには、ブレーンの張力によって、暗黒エネルギーの存在を考えなくとも宇宙の加速膨張を説明できるという提案もある。
ただ、この花々しい超弦理論の進展に疑問を呈する物理学者もいる。
まず、弦の大きさが、極微(プランク乗数のレベル)の大きさであり、観測が不可能であることがあげられる。実験観測データが全く得られないしその見込みも立たない。その中で、理論だけがどんどん膨らんでいく。実験の裏付けが無いために、何でもありの世界になってしまっている。それは科学と呼べるものだろうかという批判である。(ウォイト:「ストリング理論は科学か」)
インフレーション理論の提唱者でもある佐藤勝彦氏は面白いことを言っている。「最近のブレーン宇宙論の世界は、オタクの人々が集まって、好き勝手なことを言っているようにも見える。実際に宇宙論の国際会議でも、ブレーン宇宙論と観測宇宙論の話は2つに分かれており、前者の会合が終わると、“ブレーン宇宙論の理論モデルは色々ありますが、それはさておき、現実の宇宙の話に戻ってリアリテイのある話をしましょう”ということになる。」のだそうである。
一方、超弦理論の研究者である大栗博司氏は、実証の難しさを認めつつも、物理の基礎理論が実証されるには長い年月が必要とされてきたことを説く。例えば、ニュートンの万有引力の法則が実証されるのには100年、相対性理論は26年、ヒッグス粒子の検証には半世紀かかっている。必ず、検証される日は来るとして、量子重力理論を確立し、宇宙の誕生の謎にもせまる唯一の理論として、超弦理論の発展に大きな期待を表明している。
批判論も擁護論も、結局は、超弦理論が物理学界で大いに盛り上がっており、多くの物理学者が参加している結果として出てきていると理解してよいようだ。
個人的には、素粒子論というのは、何か複雑で面倒そうなので敬遠してきたのだが、素粒子論から出てきて、何と相対性理論をも内蔵しており、宇宙の誕生の問題に密接つに結びついている超弦理論には、大変興味が湧いてきて知的興奮を覚える。
一番の壁となっている観測実験による検証において、何か革新的なブレークスルーが生まれれば、超弦理論は現実的にも大きく発展できるのではないかと思われる。超弦理論が、宇宙の謎をどこまで解明できるものなのか、シロウトながらその将来がとても楽しみな思いがする。



by sakuraimac
| 2013-10-20 16:49
| 科学技術
|
Comments(7)
この放送、私も見ていました。
紙とペンだけで万物の理論を解き明かすなんてすごいですよね。
この講義もとても面白かったのでオススメですよ。
http://www.ted.com/talks/lang/ja/brian_greene_on_string_theory.html
紙とペンだけで万物の理論を解き明かすなんてすごいですよね。
この講義もとても面白かったのでオススメですよ。
http://www.ted.com/talks/lang/ja/brian_greene_on_string_theory.html
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泥棒さん、おひさしぶりです。 面白い講義をご紹介いただきありがとうございます。グリーンさんのTEDですね。
超弦理論から一体何が飛び出してくるのかとても興味深いですね。理論先行なので、実験結果が待ち遠しいですね。
超弦理論から一体何が飛び出してくるのかとても興味深いですね。理論先行なので、実験結果が待ち遠しいですね。
いろいろ書き込んですみません。超弦理論は今は11元だったり、ブレーンだとリサさんの話では5次元だったりします。でも、これが宇宙の構造にどう説明役を果たすのかがよくわかりません。ダークマターとかと何らかの関係があるのでしょうか?
藤田さん、たくさんコメントをいただきありがとうございます。リサさんの「宇宙の扉をノックする」は最近面白く読みました。どちらかというと、LHCのことを詳細に説明しており、超弦理論には距離を置いた書き方をしてますね。
ダークマターも興味深いですが、ダークエネルギーと、インフレーション理論の元になっている、真空のポテンシャルエネルギーとの関連も非常に興味深いところですね。
ところで、沢山書き込みをいただいた、ご縁で、藤田さんの情報について、さしつかえない範囲で、非公開モードでお教えいただけませんか?
もし、Facebook をおやりでしたら、ぜひその情報も。
ダークマターも興味深いですが、ダークエネルギーと、インフレーション理論の元になっている、真空のポテンシャルエネルギーとの関連も非常に興味深いところですね。
ところで、沢山書き込みをいただいた、ご縁で、藤田さんの情報について、さしつかえない範囲で、非公開モードでお教えいただけませんか?
もし、Facebook をおやりでしたら、ぜひその情報も。
藤田様、「バッハ、死のカンタータ」をご出版されているのですね。FB申請させていただきましたのでよろしくお願いします。
バッハの音楽が好きで、2010年にバッハの街を巡ってバッハの音楽を聴く旅に参加しました。1年後、私も訪ねたライプツッヒのトーマス教会の土産物屋をインターネットで見て回りましたら、「死のカンタータ」という音楽ミステリーがあったので、注文して読もうと思いましたが、ドイツ語なので大変でした。それでも、自分だけでなく多くの方々にも読んでいただきたくて翻訳しました。自分で言うのもなんですが、バッハの音楽のことだけでなくドイツの今の人たちのことが書いてあって面白いです。FBご一緒します。
そうなのですか。もう本格的ですね。しかもドイツ語を訳すとはすごいですね。ご著書読ませていただきたいと思います。
FB承認ありがとうございます。
FB承認ありがとうございます。

