2014年 05月 24日
世界を変えた17の方程式 |
Facebookの友人に、イアン・スチュアートの「世界を変えた17の方程式」という本を紹介されて読んでみたのだが、中々面白かった。17の方程式とは以下のとおりである。
1.ピタゴラスの定理
2.対数
3.微積分
4.ニュートンの重力法則
5.虚数
6.オイラーの多面体公式
7.正規分布
8.波動方程式
9.フーリエ変換
10.流体方程式
11.マックスウェルの電磁波方程式
12.熱力学のエントロピー
13.アインシュタインの相対性理論
14.シュレディンガーの量子力学方程式
15.シャノンの情報理論
16.カオス理論
17.ブラック・ショールズ方程式
イアン・スチュアートは数学者であるが、サイエンス解説者としても活躍しており色々一般読者向けの本を書いている。この本も、数式をあげて、それが如何に世の中に影響を与えてきたかということを、深い科学への学識をもとに大変興味深く解説してくれている。
私が個人的に本書に親しみを覚えたのは、自分が大学で担当している電子工学の授業で、しょっちゅう黒板に書いている式が、都合8個もあげられていたからである。世界を変えたと言われる式の半分近くを、普段は何も考えずに、学生たちに向かって黒板に書き続けている訳なのだから、ある意味では、大変光栄で幸せなことでもある。
全部の方程式を理解している訳ではないので、ちょっと自分が興味の湧いたところのみを拾ってみて感想を書いてみたい。
2.対数、3.微積分、5.虚数、7.正規分布、については、高校の数学でも習うし、私自身、何の疑問もいだかず使っている。しかしながらこれらを作り出すために先人たちがどれだけ努力してきたか、そして、それらの発見がその後の数学・科学技術の発展にいかに大きな貢献をしたのか、数学の教科書からは必ずしも読み取れない、歴史背景が実に興味深く述べられている。
9.フーリエ変換や15.シャノンの情報理論などは、自分の行っている講義の中心にある。それらの本質を再度見直す上でもこの本は非常に役に立った。
ところで、自分の専門からは、少し外れるのだが、何といっても断トツに面白いのが、13.相対性理論と14.量子力学の2つである。
相対性理論はとても有名だが、その実証には意外と手間取ってきた。身近な力学は、近似式であるニュートン力学ですべて用が足りてしまうので、かなり特殊な場合にしか人々はそれを感ずることができない。最近、よく引き合いに出されるのが、GPSの誤差補正には相対性理論が必須であるという例である。
アインシュタインの方程式は易しくはないが、質量とエネルギーの関係を表す公式 E=mc^2は余りに美しく簡潔で見事である。
一方、アインシュタインの方程式からは、宇宙の膨張という本人も予想出来すらできなかったことが導かれた。また、極微の点が一挙に高速以上の速さでビックバンに至ったというインフレーション理論も相対性理論から導かれた。
未来に渡って、宇宙の謎を解く最有力の基礎理論であることは万人が認めるところとなっている。
一方、量子力学は、半導体・物性などの物理化学の分野で華々しい成果を上げてきた。ただその大きな成果の割には、人間の感覚では理解できない現象とか、基本的な解釈論争が未だに続いているのが興味深い。
21世紀になってもまだ続いている解釈問題(シュレディンガーの猫論争)は、余りに面白すぎて、前にこのブログでも書いた覚えがある。また、量子もつれ(エンタグルメント)などという、とても人間の直観では理解不可能な現象が導かれている。
また、真空は本当の空ではなく、常に粒子と反粒子が発生しており、真空はエネルギーを持つという、これまた何とも不思議な話が出てくる。
現実の産業おいても大きな成果を上げながら、何とも言えない理解不能な事柄が満載されている不思議な科学でもある。
相対性理論は宇宙規模の分野で、量子力学は極微の世界でと住み分けられて使われてきた。しかしながら、宇宙の発生起源そのものが極微の世界から始まったらしいということが分かってきてから、この2つを結びつけることに、大きな関心が持たれてきた。その最有力候補として期待されているのが、超弦理論(超ひも理論)である。超弦理論は、今のところ実証の手段が無いので、まだ仮説の段階で科学としては確立されていない。
超弦理論の式が世界を変えた方程式として語られるようになるのは、一体いつになることだろうか。(私が生きている間はたぶん無さそうではあるが興味は尽きない。)
などというようなことを考えつつ、16番目の複雑系のカオス理論を読み終えて、17番目の、ブラック・ショールズ方程式に至ったときには、非常にビックリした。
ブラック・ショールズ方程式は、世に言う金融工学と呼ばれる分野の先駆的な微分方程式のことである。人間の行う経済活動が微分方程式で表されるなどとは驚きであるが、この方程式は長い間、信奉され、発案者はノーベル経済学賞を受けている。
金融工学はディリバテイブと呼ばれる金融商品群を生み出し、それを正当付ける理論として利用されてきた。ところが、ディリバテイブはいくつかの綻びをみせつつ、2007-2008年に、サブプライムローンの破綻によって、一挙に世界的な金融危機を引き起こした。
私は経済学は科学ではないと思っている。ましてそれを数式で表すことができるなどとはとても信ずることができない。自然科学の分野にかかわっている者としては、17番目のブラック・ショールズ方程式だけは、非常な奇異な感じがする。良い意味でも悪い意味でも世に影響を与えたというのは事実かもしれないが、世界を変えた方程式と呼ぶには、やはり違和感がある。(世を騒がせた方程式というのなら分かるが)
16番目までの式は100年後にも同じように残されているだろけれど、17番目の式は、100年後にはきっと忘れ去られて記録には残っていないに違いないと思う。
100年後には、17番目の式は、超弦理論に置き換わっているに違いないというのがシロウトなりの私の予想である。

1.ピタゴラスの定理
2.対数
3.微積分
4.ニュートンの重力法則
5.虚数
6.オイラーの多面体公式
7.正規分布
8.波動方程式
9.フーリエ変換
10.流体方程式
11.マックスウェルの電磁波方程式
12.熱力学のエントロピー
13.アインシュタインの相対性理論
14.シュレディンガーの量子力学方程式
15.シャノンの情報理論
16.カオス理論
17.ブラック・ショールズ方程式
イアン・スチュアートは数学者であるが、サイエンス解説者としても活躍しており色々一般読者向けの本を書いている。この本も、数式をあげて、それが如何に世の中に影響を与えてきたかということを、深い科学への学識をもとに大変興味深く解説してくれている。
私が個人的に本書に親しみを覚えたのは、自分が大学で担当している電子工学の授業で、しょっちゅう黒板に書いている式が、都合8個もあげられていたからである。世界を変えたと言われる式の半分近くを、普段は何も考えずに、学生たちに向かって黒板に書き続けている訳なのだから、ある意味では、大変光栄で幸せなことでもある。
全部の方程式を理解している訳ではないので、ちょっと自分が興味の湧いたところのみを拾ってみて感想を書いてみたい。
2.対数、3.微積分、5.虚数、7.正規分布、については、高校の数学でも習うし、私自身、何の疑問もいだかず使っている。しかしながらこれらを作り出すために先人たちがどれだけ努力してきたか、そして、それらの発見がその後の数学・科学技術の発展にいかに大きな貢献をしたのか、数学の教科書からは必ずしも読み取れない、歴史背景が実に興味深く述べられている。
9.フーリエ変換や15.シャノンの情報理論などは、自分の行っている講義の中心にある。それらの本質を再度見直す上でもこの本は非常に役に立った。
ところで、自分の専門からは、少し外れるのだが、何といっても断トツに面白いのが、13.相対性理論と14.量子力学の2つである。
相対性理論はとても有名だが、その実証には意外と手間取ってきた。身近な力学は、近似式であるニュートン力学ですべて用が足りてしまうので、かなり特殊な場合にしか人々はそれを感ずることができない。最近、よく引き合いに出されるのが、GPSの誤差補正には相対性理論が必須であるという例である。
アインシュタインの方程式は易しくはないが、質量とエネルギーの関係を表す公式 E=mc^2は余りに美しく簡潔で見事である。
一方、アインシュタインの方程式からは、宇宙の膨張という本人も予想出来すらできなかったことが導かれた。また、極微の点が一挙に高速以上の速さでビックバンに至ったというインフレーション理論も相対性理論から導かれた。
未来に渡って、宇宙の謎を解く最有力の基礎理論であることは万人が認めるところとなっている。
一方、量子力学は、半導体・物性などの物理化学の分野で華々しい成果を上げてきた。ただその大きな成果の割には、人間の感覚では理解できない現象とか、基本的な解釈論争が未だに続いているのが興味深い。
21世紀になってもまだ続いている解釈問題(シュレディンガーの猫論争)は、余りに面白すぎて、前にこのブログでも書いた覚えがある。また、量子もつれ(エンタグルメント)などという、とても人間の直観では理解不可能な現象が導かれている。
また、真空は本当の空ではなく、常に粒子と反粒子が発生しており、真空はエネルギーを持つという、これまた何とも不思議な話が出てくる。
現実の産業おいても大きな成果を上げながら、何とも言えない理解不能な事柄が満載されている不思議な科学でもある。
相対性理論は宇宙規模の分野で、量子力学は極微の世界でと住み分けられて使われてきた。しかしながら、宇宙の発生起源そのものが極微の世界から始まったらしいということが分かってきてから、この2つを結びつけることに、大きな関心が持たれてきた。その最有力候補として期待されているのが、超弦理論(超ひも理論)である。超弦理論は、今のところ実証の手段が無いので、まだ仮説の段階で科学としては確立されていない。
超弦理論の式が世界を変えた方程式として語られるようになるのは、一体いつになることだろうか。(私が生きている間はたぶん無さそうではあるが興味は尽きない。)
などというようなことを考えつつ、16番目の複雑系のカオス理論を読み終えて、17番目の、ブラック・ショールズ方程式に至ったときには、非常にビックリした。
ブラック・ショールズ方程式は、世に言う金融工学と呼ばれる分野の先駆的な微分方程式のことである。人間の行う経済活動が微分方程式で表されるなどとは驚きであるが、この方程式は長い間、信奉され、発案者はノーベル経済学賞を受けている。
金融工学はディリバテイブと呼ばれる金融商品群を生み出し、それを正当付ける理論として利用されてきた。ところが、ディリバテイブはいくつかの綻びをみせつつ、2007-2008年に、サブプライムローンの破綻によって、一挙に世界的な金融危機を引き起こした。
私は経済学は科学ではないと思っている。ましてそれを数式で表すことができるなどとはとても信ずることができない。自然科学の分野にかかわっている者としては、17番目のブラック・ショールズ方程式だけは、非常な奇異な感じがする。良い意味でも悪い意味でも世に影響を与えたというのは事実かもしれないが、世界を変えた方程式と呼ぶには、やはり違和感がある。(世を騒がせた方程式というのなら分かるが)
16番目までの式は100年後にも同じように残されているだろけれど、17番目の式は、100年後にはきっと忘れ去られて記録には残っていないに違いないと思う。
100年後には、17番目の式は、超弦理論に置き換わっているに違いないというのがシロウトなりの私の予想である。

by sakuraimac
| 2014-05-24 08:51
| 科学技術
|
Comments(0)

